書の世界で楷書が基本であることは誰でも知っているのに、実際にはこの基本をおろそかにしているとしか思えないケースをよく見ます。
また、楷書は非常に奥が深い書体であるにもかかわらず、書展や雑誌、WEB上においても、楷書の作品はほとんど目にすることができません。
「もっと楷書で書いて晒せっ!」
と叫びたくもなりますよ。
ない理由は簡単。
楷書は難しいし、上手下手が一目瞭然だからね。
基礎のキもできていないのに、行草がかっこよくて見栄えがいいから、未熟なまま背伸びをする人の多いこと。
ミミズみたいで読めないから、評価する側もわからないことが多いし。
経験が浅いにもかかわらず、適当にさらっと書いたら、それらしい作品に仕上がった気がするのでしょう。
同じように楷書でやってみなさいって。
恥ずかしすぎて、とてもじゃないが他人に見せられないはずです。
文字の結構を学び、漢字の構造を理解しなければ、行草篆隷が上達するはずがありません。
そんな自分の楷書作品もまだまだお粗末過ぎますが、それでもこの困難な課題に取り組むことを非常に誇りに思っています(単にあまのじゃくなのかもしれませんが)。
長い道なんだし、じっくり楷書と向き合ってもいいんじゃない?
自由度が大きくないのは事実でも、芸術性の表現手法は幅広くあります。
その困難さゆえに、素晴らしい楷書作品が訴えてくるものは、どれも強く大きく重量感があるのです。
峻厳な山の向こうにある何かを掴めればいいんですが・・・。